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昆活のメモ帳ブログ
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幼若ホルモンの話

この前の記事の続き。

クワガタの大顎の形成には、遺伝子だけではなくホルモンも関係してるんだそうです。

 

 

それがあの“幼若ホルモン”

 

幼若ホルモンといえば、本来なら昆虫の変態(加齢)を抑制する役割が有名なホルモンです。
 
そのホルモンの作用を人間の都合よく利用している例があります。それが養蚕です。
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カイコ幼虫の餌にこのホルモンを微量混ぜて与えます。

すると加齢が少し遅れ、餌を食べる期間が長くなります。つまり、その分体が大きく育ちます。
その結果、より大きい繭を作らせて生糸の生産量を高めるというものです。
 

 

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さて、その幼若ホルモンが、クワガタの大顎の育成にどんな影響があるのでしょうか。

その論文がコレ↓

 

甲虫の性特異的な武器形質発現における幼若ホルモンの役割

https://www.jstage.jst.go.jp/article/nl2008jsce/41/154/41_25/_pdf/-char/ja

 概要

  • オスの顎は、前蛹期の幼若ホルモンの濃度が濃いほど大歯化する。
  • 濃度の薄いオス個体に幼若ホルモン処理をすると大歯化する。
  • しかし、メスは濃度がオスと大差がなく、更に幼若ホルモン処理をしたとしても顎が大きくなることはない。
  • 性決定にはdsx遺伝子が関与している。(dsx遺伝子の機能を阻害すると、雌雄中間的な個体が生まれる)
  • メスの幼若ホルモンによる大顎発達は、dsx遺伝子によって抑制される。(dsx遺伝子の機能を阻害した雌雄中間個体は全て、幼若ホルモン処理によって大顎が大歯化する)

 


なるほどね。
ブリードに役立てるとすれば、個体の幼若ホルモンのバランスをどうにかコントロールして顎を長く長く育てるのがポイントですね。
 
…そんなこと出来るかよ!笑
 
 
そもそも、幼若ホルモンは微量の違いでも個体の成長に様々な影響を与えます。顎を伸ばすためだけに、一概にホルモン量を増やせば良いという訳にはいかないと思います。
更に更に、菌糸ビンの様子だとか色々なことに気を配らなくてはいけないので、ホルモンをコントロールするなんて机上の空論ですね。
 
 
そこで、幼若ホルモン量に左右される大顎の伸びは、ブリーダー側はコントロールできないと割り切ってみましょう。
 
すると、トップブリーダー達がよく言う『この個体は、親種にするにはアゴが長すぎる』と言う気持ちが分かる気がします。
 
つまり、こういうこと。
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ここに同サイズの個体が2匹いるとします。片方が顎が長い♂、もう片方は顎短い♂。この中から、ブリードの親種を選ぶ場合、顎の短い方(体が大きい方)がいいのではないか。
 
なぜなら、コントロールできない顎の長さよりも、体の大きさを子供に遺伝させた方が大型化しやすいということです。トップブリーダー達のあの発言は、これを経験で知っているのですね。
 
もし先ほどの顎の短い♂親から、同じ体の大きさの子供がたくさん羽化したとしましょう。
 
きっと中には顎が長く育つ個体もいるはずです。そうなればサイズは親超えです。
 
もう笑いが止まりません。フフフ。
 
 
 
p.s.
私は顎が長い個体が好きなので、顎長さんばかり親種に選んでいました。
 
それは今考えると失敗だったのかもしれませんね。
 
 
※この記事は私個人の考察です。